最近、ご相談を受けた“後見制度支援信託”。
平成24年にスタートした制度で、後見制度による支援を受けている本人の財産のうち、「通常使用しない金銭(日常的に必要十分な支払以外の金銭)」を信託銀行に信託する仕組みです。
この制度の目的は、「本人の財産を安全にかつ確実に保護する」「後見人の方の財産管理の負担を軽減する」ことにあります。
本人の現金や預貯金などを信託を活用して管理することができ、この信託した財産は元本が保証され、預金保険制度の保護の対象となります。
また、信託した財産の払い戻しや信託解約などをする場合、家庭裁判所の指示書が必要ですので、第三者による引き出しなどによって財産が損なわれることはありません。
この制度の背景として、後見人等による着服や横領など不正事例が後を絶たたないことが一因となっています。
平成23年2月から平成24年2月までの2年間で、不正事件は935件。被害総額は80億円を超える額にのぼることが、最高裁判所の調査により判明しています。
後見人を監督する制度はありますが、どちらかといえば事後的な監督にならざるを得ないので、不正を防ぐ仕組みとして確実に機能しているとは言い難い状況であり(とはいえ、この後見監督制度の改善・強化も急務であることに間違いないですが)、そのため、事前に本人の財産を信託することで、「信託銀行による財産の管理・保護」と「裁判所による指示書」により、不正が起き得ない仕組みを構築する機能としてこの制度はスタートしました。
当初は、新規に後見申立をする際に限定された制度でしたが、それが緩和され、現在後見制度を利用されている方も利用できるようになったため、家庭裁判所から利用を促す通知が後見人の方へ届いているようです。
高齢化がますます進む中、今後、この制度を利用する方、利用を検討する方が増えていくと思いますので、次回は、もう少し具体的にこの制度の仕組み、手続きについて考えてみたいと思います。