2016年11月23日水曜日

行政書士のお仕事

最近は、許認可関係の依頼や相談が続いています。
行政書士として取り扱える許認可は1万件を超えると言われており、それぞれ許認可の要件や条件は異なるので、初めての案件はイチから勉強し、時には行政庁に確認しながら進めることも。

多くの許認可のポイントとなるのは、次の4点。
①ヒトの要件・・・免許や資格、経験や専任性など。法人の場合は目的も大切です。
②モノ・ハコの要件・・・設備や営業所について。実地調査の有無も要確認。
③オカネの要件・・・財産的基礎、許認可手数料。
④ジカン・・・行政の標準処理期間

①〜③を証明するためには、何を添付資料とするのか把握し、④から逆算してスケジューリング。
何かを落とせば、時間を要してしまったり、最悪の場合は取得できなかったりするので、依頼者の方の事業開始に大きく影響を与えてしまい、とても神経を使います。
そもそも相談者の方がその事業を開始する際に許認可が要るかどうかも、しっかり根拠を取らなければいけません。

というように、とても慎重を要する業務ですが、事業開始に向けて依頼者の方とビジョンを共有できたり、普段とは違う新しい世界を知ることができたり、とても楽しく学びにもなります。

ところで、少し前に行政書士試験がありましたね。
合格後、行政書士会に登録の際は、準備する資料がたくさんあり、まさに上記④つのポイントを登録段階で経験できたので、実務でとても役立ちますよ!




2016年11月10日木曜日

後見制度支援信託とは④

後見制度支援信託について、最終話です。
 これまで制度の概要や要件について見てきましたので、利用にあたってのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

■メリット
本人の財産を安全に、確実に保護することができる
・元本が保証され、預金保険制度の保護の対象
・信託した財産の払い戻しや信託解約などをする場合、家庭裁判所の指示書(事前チェック)が必要

後見人の財産管理の負担を軽減
・金銭の管理について、透明性が確保できる
・金銭の管理方法を巡る親族間トラブルを回避
・信託した金銭については、信託銀行等の明細を利用できるので、裁判所に提出する事務報告書の作成が容易になる

■デメリット
報酬コストの発生による経済的負担
①信託契約の締結に関与した専門職後見人に対する報酬
→家庭裁判所が、専門職後見人が行った内容や本人の資産状況によって決定します。
②信託銀行に対する報酬(管理報酬・運用報酬)
→管理報酬としては、信託銀行によって異なりますが、無料~約16万(契約中は月額負担無料~約3000円)。運用報酬は収益に応じて発生。

臨時・突発的な財産の使用に時間と手間を要する場合も
事前に裁家庭判所の指示書が必要なため、申立から指示書交付まで、手間と手続時間を要します。
裁判所の迅速な対応にも大いに期待したいのですが、そもそも前回のブログで述べた「裁判所が審判するうえでの判断材料」の“5.本人の居所が安定し、毎月の収支計画を立てられている状況である”にあるように、臨時・突発的な財産の使用の必要性が最小限であることがこの制度の利用において予定されていることが窺えます。


最後に、今後のこの制度の展望についても考察してみます。
そもそも、この制度の背景として後見人等による着服や横領など不正事例が後を絶たたないことが一因となっています。その後見人を監督する制度は、どちらかといえば事後的な監督にならざるを得ませんので、後見監督制度の改善・強化も図りつつ、家庭裁判所としてはこの制度の利用促進を推し進めていくことで、成年後見制度自体の信用を担保していく意向が感じ取れます。

結果、「親族後見人+一定の金銭財産がある+(その他判断材料による)」のケースで今後成年後見制度を利用する場合、「①後見制度支援信託を利用 ②後見監督人が選任される」ゆくゆくはこの2択の選択(というよりも、“①でなければ②”“①と②の併用”)となっていくのではないのでしょうか。

この制度は、本人にとってメリットが多いのですが、事情によっては、運用手続面においてのデメリットの方が際立つ場合もあります。また、個別背景(財産の多寡、ご容態や居所の状況、選任された後見人等)によって利用の判断軸は大きく変動しますので、利用にあたっては家庭裁判所や専門職に充分にご相談されることを推奨いたします。




2016年11月2日水曜日

後見制度支援信託とは③

引き続き、後見制度支援信託について。

これまで述べてきたことと重複にもなりますが、成年後見制度を利用されている方で、どのような方がこの制度の利用に適しているのか、また、裁判所が審判するうえでの判断材料や要件を、簡単に挙げてみると次のようになります。

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1.成年後見人または未成年後見人を利用している
保佐人、補助人を利用されている方は、この制度は利用できません。

2.親族の方が後見人である
専門職後見人である場合、今のところこの制度の利用外となっています。

3.本人に一定額の金銭がある
目安としては、1000万円以上でしたが、500万円以上に緩和されている地域もあります。
不動産や動産は対象外となっています。

4.本人が遺言などで財産の使いみちを決めていない
本人が遺言などで財産の処分方法を決めている場合、“財産を信託する”ことは、本人の意思に反してしまわないか検討する必要があります。成年後見の制度は、本人のための制度ですので、本人の意思の尊重を最優先しようという趣旨が考えられます。

5.本人の居所が安定し、毎月の収支計画を立てられている状況である
入院中の場合などは、どこが本人の住まいになるかまだ不確かですし、介護施設への入居などの予定がある場合は大きな財産を動かす必要があるので、信託しない方がよい場合もあります。
また、日常的に使用する金銭は定期交付になりますので、毎月の収支の目途が立っていることも判断材料の一つになります。

6.その他、本人・後見人の個別的事情
本人の財産管理や身上監護に、親族間で意見の相違がある場合は十分に配慮が必要です。

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今のところ、上記がこの制度を利用するにあたっての判断材料と考えられますが、新しい制度な故、今後、変更されていく可能性は大きいと思います。


最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」(平成25年1月~12月)によると、平成25年の1年間でこの制度を利用された方は533人(信託した金銭の平均額は約3700万円)とあります。成年後見審判の申立件数約26000件のうち、親族後見人はおよそ42%とあるので、数値的にはまだ周知されていない状況でした。
とはいえ、平成25年12月時点では新規に後見申立をする際に限定された制度でしたが、それが緩和され、現在後見制度を利用されている方も利用できるようになったことで、今後は、利用に向けた動きがもっと加速していくと思います。

次回は、メリット・デメリットについて、そして、今後のこの制度の展望について考えたいと思います。